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あとできいたらみんな彼女のことが好きだったらしい。
でも当時はそんな話ひとつもなかった。
高校時代の理系クラス。
卒業式も終えた、3月下旬の頃。

地方ならクラスメートのほとんどが町を出ていく。
それぞれの大学へと進路が決まってる。
自分も明日には家を出る。

旅立ちの前のことはほとんど記憶に残ってない。
覚えているのは公園の電話ボックス、
彼女の家の近く。
すでに小一時間そこにいた。

会ってどうする。
いや会わないでどうする。

何度も何度もボックスに入り直し、
何度も何度も受話器を取り直す。
始めようとしているのか、
区切ろうとしているのか、
何をどうするつもりなのかさえ、
たぶんもう、
わからなくなってる。

何度も何度も受話器を取り直し、
何度も何度もコインが戻る。
電話番号の最後の「7」が、指をかけても回せない。

結局、誰か回したんだろうか。
白状したヤツはまだいない。
私もたぶん話すことはない。